社長メッセージ

  • 写真: 社長メッセージ

2026年3月期の事業環境

変化を直視し、2035年から逆算して変革を進める

この1年、私が最も強く感じたのは、自動車業界を取り巻く環境変化の大きさと、そのスピードです。当社の売上高の多くを占める樹脂加工製品事業も、こうした変化の影響を大きく受けました。これまで自動車ではEV化が大きな潮流となっていましたが、現在はEVやハイブリッド車、エンジン車など、多様な動力システムが併存する方向へと変化しつつあります。こうした中、主要なお客様においてもEV戦略の見直しが進み、当社の事業環境も大きく変化しています。加えて、中国国内市場で勢いを増していた中国自動車メーカーは、2025年以降、中国市場の成長鈍化を背景に海外展開を加速させており、とりわけアジア地域では日系自動車メーカーとの競争が一段と激しくなっています。さらに、第4四半期には中東情勢の緊迫化も重なり、サプライチェーンやエネルギーをめぐる先行きの不透明感が一段と高まりました。

こうした環境変化の中、従来の延長線上にある取り組みにとどまることなく、変化を成長の機会と捉え、自ら変革を進めていきます。現在、2年目を迎えた第14次中期経営計画(以下、第14次中計)は、2035年長期ビジョンの実現に向けた重要なマイルストーンです。策定当初から一貫して掲げているのは、事業基盤を強化し、グループ全体の事業成長と収益性の向上を実現することです。 その実現に向け、樹脂加工製品事業では、お客様のポートフォリオを拡充するとともに、特定の主要顧客への依存度を着実に低減し、安定的な事業基盤の構築を進めてきました。一方、ケミカル事業においても、新たな市場や事業機会の創出を通じて収益基盤の強化を図り、グループ全体の成長につなげていくことを目指しています。

その実現に向け、樹脂加工製品事業では、お客様のポートフォリオを拡充するとともに、特定の主要顧客への依存度を着実に低減し、安定的な事業基盤の構築を進めてきました。一方、ケミカル事業においても、新たな市場や事業機会の創出を通じて収益基盤の強化を図り、グループ全体の成長につなげていくことを目指しています。

こうした取り組みをさらに加速させる一手として、2026年3月期には株式会社レゾナックのモビリティ事業の一部を取得するM&Aを決定しました。ご縁に恵まれ、当社を事業の承継先として選んでいただいたことに、深く感謝しています。このM&Aは顧客基盤の拡充に加え、技術・人材・事業領域の強化を通じて、グループ全体の成長をさらに前進させる重要な第一歩と位置づけています。変化に柔軟に向き合い、成長の力へと変えながら、第14次中計を着実に推進していくことが、2035年長期ビジョンの実現につながると確信しています。

  • 写真: 売上高(森六グループ連結)
  • 写真: 営業利益・営業利益率(森六グループ連結)

構造改革の進展

収益性向上へ。描いた打ち手を、一つひとつ実行に移す

M&Aに関わる費用を除けば、第14次中計1年目の業績には一定の手応えを感じています。樹脂加工製品事業では、中国における減産の影響が想定以上に大きかったものの、日本やカナダの拠点がその影響を補い、目標に近い水準まで持ち直すことができました。一方、自動車関連ビジネスの比重が大きいケミカル事業は、中国・東南アジアでの減産の影響を受け、目標には届きませんでした。しかし、連結ベースでは、これまで進めてきた収益構造改革の成果が少しずつ形になり始めています。

その一例が、2025年4月に実施したメキシコ工場の売却です。メキシコ工場は、新たな顧客基盤の構築を目的に、成長戦略の一環として建設した拠点でした。しかし、市場環境の厳しさが今後も続くことを見据え、経営資源を成長分野へ振り向けるべきと判断しました。売却にあたっては、事業と従業員の雇用を引き継いでいただける会社を優先して選定し、譲渡完了まで大きな混乱なく進めることができました。

こうした構造改革を進める一方で、将来の成長に向けた投資にも着実に取り組んでいます。例えばインド拠点における設備投資を進めており、2027年3月期末には外装塗装ラインが稼働する予定です。一方で、事業環境は依然として厳しい状況にあります。主要顧客である本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)ではEV戦略の見直しが進められており、中国・インド・東南アジア向けの商品開発についても、新たな方針が示されつつあります。こうした事業環境の変化を踏まえ、当社はホンダとの取り組みを一層深化させるとともに、他の日系自動車メーカーやインドのローカル自動車メーカーとの取引拡大に向けた営業・提案活動を強化しています。

当社が最大の経営課題の一つと認識しているのが、中国メーカーとの競争です。中国自動車メーカーの海外展開に伴い、中国系サプライヤーも海外市場へ進出し、短期の利益よりシェア拡大を優先した低価格戦略で参入してきています。当社は技術力とサービス品質に自信を持っていますが、慢心することなく技術開発を加速させ、価格競争に陥らない付加価値を生み出すこと。同時に、原価競争力そのものをさらに高めること。この両輪を回し続けることが、将来の競争力につながります。

こうした課題認識を踏まえ、2026年5月には第14次中計を見直しました。森六ReNovaグループのグループ参画を踏まえ、財務目標を新たに設定するとともに、2035年長期ビジョンでは「売上高2,200億円以上」「ROE10%以上」という具体的な目標値を掲げました。これらの目標は決して容易に達成できるものではありません。その実現に向け、既存事業の収益力強化と森六ReNovaグループとの融合によるシナジー創出を着実に積み重ね、持続的な成長と企業価値の向上につなげていきます。そのためには、変化を前向きに捉え、グループ全体で知恵や技術、経験を結集し、それぞれの強みを活かしながら新たな価値を創造していくことが重要です。一人ひとりの挑戦が森六グループの競争力を高め、2035年長期ビジョンの実現につながると確信しています。

M&Aの実行

森六ReNovaグループとの融合で強みを広げ、成長を加速する

今回の統合における最大の意義は、森六ReNovaグループの顧客基盤が当社の既存ポートフォリオと重複せず、新たなお客様との接点を得られたことです。特に、これまで取引機会のなかった商用車メーカーとの接点を得られたことは、当社にとって大きな意義があります。社内には、商用車は乗用車に比べてモデルライフが長く、投資回収にも時間を要することから、当社のビジネスモデルへの影響を懸念する声もありましたが、特定顧客への依存度を低減し、顧客ポートフォリオを広げることの意義の方が大きいと判断しました。他社自動車メーカーへの営業活動はこれまでも継続してきましたが、既存のサプライチェーンへ新たに参入することは容易ではありません。すでに他社自動車メーカーとの信頼関係を築いてきた事業がグループに加わったことは、当社にとって大きな強みになります。

さらに技術面では、バックドアモジュールという、当社がこれまで量産経験のなかった領域のノウハウを得られたことも大きな意義です。量産を通じて初めて得られる品質面や生産面での知見は、今後の技術力向上につながる貴重な財産です。モジュール化を進める自動車メーカーが増える中、この知見は当社が将来その領域へ挑戦するための重要な基盤になります。これまで培ってきた加飾技術とも融合させながら、新たな価値提案につなげていきます。

こうした相乗効果の実現には、PMI※の着実な推進が欠かせません。統合を進める中で見えてきたのは、同じ「営業」や「設計」という名称の組織であっても、その役割や業務プロセスが両社で大きく異なるということです。

両者の違いを「どちらが正しいか」という視点で捉えるのではなく、お互いの強みを活かしながら、森六グループとして最適な体制を築くことこそが、私が考えるPMIの本質です。森六ReNovaグループが持つ発泡成形・モジュール化技術や大型外装部品の開発ノウハウと、森六が培ってきた加飾技術、材料開発力、生産技術力を融合することで、これまでにない価値をお客様へ提供できると考えています。

また、調達面においても、グループ全体でコスト競争力を高められる余地があります。現在、森六ReNovaグループでは材料や副資材の調達を外部商社に依存するケースが多くありますが、グループの商社機能を活用することで、サービス水準を維持しながら調達効率を高められる可能性があります。まずは調達シナジーの実現に着実に取り組み、その先の共同開発や新材料開発へとつなげていきます。

PMIにおいて私が大切にしているのは、「森六のやり方に合わせてもらう」ことではありません。私自身も森六ReNovaグループの拠点に足を運び、社員の皆さんと直接対話を重ねながら、お互いの良いところを取り入れ、どのような会社を目指していくのか、そのビジョンを共有し、新しい森六グループをともにつくっていきます。

※PMI(Post Merger Integration):M&A後に組織・業務・人材を統合し、シナジー創出を図る取り組み

  • ケミカル事業との調達シナジーによる競争力強化

成長戦略の加速に向けて

ケミカル事業を次なる成長の柱へ育てる

現在は、ケミカル事業のさらなる成長に向けた土台づくりに注力しています。当社はかねてから、「ものづくり」と「化学品商社」という2つの事業のシナジーについて、どこに拡大の余地があるのか、どう最大化していくのかを課題として捉えてきました。その実現に向け、当社の存在意義を示すOur Missionとして、「ものづくりの技と化学の力で、社会に価値あるソリューションを提供する」を掲げています。

今回グループに加わった森六ReNovaは、レゾナックの前身の一つである旧日立化成をルーツとする組織であり、化学品の取り扱いや材料開発にも強みを持っています。「ものづくり」と「化学」に知見のある森六ReNovaグループが、いわば生産事業とケミカル事業の橋渡し役を果たし始めており、ケミカル事業の社員が自ら生産現場に足を運び、ともに課題を見つけ、解決策を考える動きも自然と増えています。これまでケミカル事業を中心に取り組んできた材料開発との融合によって、グループシナジーを生み出す土壌が豊かになり、ビジョン実現に資する取り組みが拡大していくことが期待できます。同時に、この流れをケミカル事業の活動にも還元し、ケミカル事業のお客様への提案にも広げていきます。

私たちが目指しているのは、課題解決型の企業への進化です。自ら手を動かしてものをつくることで付加価値を生み出す仕事と、ネットワークや情報力を活かして、ものづくりだけでは生み出せない価値を提供する仕事の両方を軸に事業ポートフォリオと経営資源の配分を見直し、森六ならではのソリューションをつくり上げていきます。

ケミカル事業には、特殊フィルムを手がける四国化工や、中間材を製造する五興化成工業といったものづくりの会社もありますが、それ以外は主に商社機能を担っています。当社はこれまで、長年にわたり培ってきたお客様との信頼関係を礎に事業を発展させてきました。その強みをこれからも大切にしながら、さらに選ばれ続ける企業であるためには、お客様の期待を上回る新たな提案やサービスを生み出し続けることが欠かせません。例えば、サプライチェーン全体を見据えたソリューション、さらには商社の枠を超えたサービスの提供など、私たちにはまだ多くの可能性があります。こうした価値提供を積み重ね、ケミカル事業の成長、ひいては森六グループ全体の競争力向上につなげていきます。

そのためにも、経営陣と現場が率直に意見を交わしながら、新たな可能性を形にしていくための対話を大切にし、一つひとつ着実に実現していきます。

変化の実感

一人ひとりの課題認識を、 挑戦につなげる組織へ

写真: 一人ひとりの課題認識を、 挑戦につなげる組織へ

最近、心強く感じているのは、森六ReNovaグループが加わったことで、社員一人ひとりが新しい環境を自分ごととして受け止め、お互いの強みやリソースを活かそうという動きが自然に広がっていることです。例えばタイでは、もともと森六の工場と森六ReNovaグループの工場が併存していますが、現地の責任者同士が自発的に交流し、業務や設備を相互に補完しようという取り組みが始まっています。経営から指示を出さなくても、現場自らが会社をより良くしていこうと考え、行動する姿勢が育ち始めています。この主体的な取り組みの広がりこそが、PMIを成功へ導く原動力です。

こうした取り組みを着実に積み重ねることで、シナジーを創出し、新たな価値を生み出していきます。そして、お互いの強みを融合しながら筋肉質な組織を築き、この領域におけるトップサプライヤーを目指していきます。

こうした前向きな動きを一つの方向へ束ね、進むべき道筋を明確に示すことが、経営の役割です。そのためには、経営層自らが多様な視点から率直に意見を交わし、意思決定の質を高めていくことが欠かせません。異なる事業やバックグラウンドを持つメンバーが意見を交わすことで、新たな視点が生まれ、経営の判断はより良いものになります。実際に、森六ReNovaグループから加わった執行役員が率直な意見を述べることで、これまでにない視点から議論が深まり、経営会議にも良い刺激が生まれています。こうした対話を重ねることが、より良い経営につながり、その姿勢は必ず現場にも広がっていくと考えています。

ガバナンス面でも、変革を支える基盤は着実に強まっています。今回の大型M&Aを経て、資本効率をどのように高め、どのような指標で評価していくかという議論は以前にも増して活発になり、社外取締役からも、より多角的で示唆に富む意見をいただけるようになりました。その背景には、資料の早期共有や丁寧な情報提供など、事務局機能を強化することで、建設的な議論を支える環境づくりを進めてきたことがあります。さらに2026年度は、社外取締役との意見交換やディスカッションの機会を充実させるなど、より活発な対話を促す取り組みも進めています。

こうした土壌があるからこそ、新たに加わっていただいた社外取締役にも、早速その知見を発揮していただいています。私自身、経営の視野を広げ、意思決定の質を高めるためには、自分とは異なる視点から率直な意見をいただけることが不可欠だと考えています。2024年6月の監査等委員会設置会社への移行以降に築いてきたガバナンス体制は、こうした対話を重ねながら、着実に実効性を高めています。

森六グループが目指す未来

期待に応える成果を積み上げ、 選ばれ続ける企業へ

株主・投資家の皆さまにまずお伝えしたいのは、私たちが携わる自動車・化学関連産業は、社会を支える基幹産業であり、これからも社会の発展を支える重要な役割を担い続けるということです。だからこそ、私たちは、ものづくりの技と化学の力を融合させ、高度な製品づくりと最適なソリューションを世界中のお客様に提供することで、選ばれ続ける企業を目指します。今回の森六ReNovaグループの統合は、その進化を加速させるための確かな一手であり、この統合の価値を着実に成果へと結びつけていくことが私の責任です。お客様や社会から期待される存在であり続け、その期待に応える成果を業績として堅実に積み上げていくことで、株主・投資家の皆さまにも信頼していただける会社へと成長させていきます。

変化の激しい時代だからこそ、私たちは目先の環境変化に一喜一憂するのではなく、2035年長期ビジョンの実現に向けて着実に歩みを進めてまいります。ものづくりの技と化学の力を結び合わせ、お客様の課題を解決する価値を提供し続ける。それが、私たちグループ全員で目指す未来の姿です。引き続き変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

  • 写真: 署名

One Moriroku

「一つの仲間」として、新たな価値創造を実現するために

2026年4月、株式会社レゾナックからM&Aにより取得したモビリティ事業の一部を基盤とする森六ReNovaおよび森六モビリティプロダクツが始動しました。 今回のM&Aは、2035年長期ビジョン「CREATE THE NEW VALUE」の実現に向け、技術力や顧客基盤を強化し、持続的な成長を加速させる重要な戦略の一つです。

一方で、M&Aは株式取得が完了した時点で成功するものではありません。 真の価値は、互いの技術やノウハウ、人材、企業文化を融合し、新たなシナジーを創出することで初めて実現します。 その取り組みがPMI(Post Merger Integration)です。

  • 写真:2026年4月 森六モビリティプラダクツ(タイ)訪問

森六グループでは、PMIの出発点を「相互理解」と位置づけています。 森六および森六ReNovaの両社長が各拠点を訪問し、M&Aの目的や2035年長期ビジョン、統合によって目指す姿を共有するとともに、社員との対話を通じて相互理解を深めています。 互いの考え方や価値観を理解し、それぞれが培ってきた強みを尊重することが、新たな価値創造の土台になると考えているためです。

PMIでは、下記4つを「PMIトップ方針」として掲げています。 これらをすべての取り組みの判断基準とし、技術・組織・文化の融合を着実に進めることで、2035年長期ビジョンの実現と企業価値の向上につなげていきます。

PMIトップ方針

  1. 一つの仲間として未来を創る
  2. 強みの融合による新たな価値創造
  3. お客様と従業員の信頼を守る
  4. スピード・誠実・透明

森六ReNova株式会社 社長メッセージ

写真: 執行役員 森六ReNova株式会社社長 平田 知広

4月1日の統合以降、森六の皆さまには温かく迎えていただき、互いの強みを尊重しながら、一つのチームとして歩みを進めています。

風通しが良く活気あふれる環境の中で、新たな価値創出に向けた挑戦が始まっています。私たちも、これまで培った技術力と経験を活かし、森六グループの成長に貢献していく決意です。皆さまから寄せられる期待を力に変え、ともにさらなる発展を目指してまいります。