気候変動

基本的な考え方

森六グループは「森六グループ サステナビリティ方針」に基づき、持続可能な社会の実現を目指し、すべてのステークホルダーに配慮した事業活動を推進しています。

喫緊の課題である気候変動問題をサステナビリティの最重要課題(マテリアリティ)の一つとして特定し、企業としての責任を果たすため、温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでいます。

当社の「森六グループ  環境方針 」では、環境負荷の低減を基本とし、資源やエネルギーの効率的な活用、リサイクルの促進、廃棄物や汚染物の適切な管理を通じて、持続可能な事業運営を実現することを掲げています。
この方針を踏まえ、当社は中期計画の3年間および2030年までのGHG削減目標を策定し、最重要非財務KGIの一つとして位置づけています。
これにより、脱炭素社会の実現に向けた事業ポートフォリオの変革を進めるとともに、関連分野への投資機会の検討・拡充にも取り組んでいます。

2022年10月には、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明しました。本提言に基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点から情報開示を拡充し、環境負荷の低減と企業価値向上の両立を目指しています。
また、パリ協定をはじめとする国際的な方針や、地球温暖化対策推進法(温対法)、省エネ法などの気候変動関連法規制を支持し、適切なエネルギー管理と定期報告を実施しています。

今後も、法令順守を徹底し、環境に配慮した事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

  • TCFD TASK FORCE ON CLIMATE-RELATED FINANCIAL DISCLOSURES

TCFD提言に基づく情報開示

環境課題に対するガバナンス体制

気候変動問題を含むサステナビリティ経営に関する基本方針や重要課題、重要な目標設定について、取締役会で審議および決議を行っています。
また、環境課題に関するKPIは中期経営計画に組み込み、当社グループ全体で取り組みを推進しています。

  • 森六グループでは社長直下でサステナビリティ推進部を設置し、コーポレート部門、生産事業本部、ケミカル事業本部と連携体制を取りサステナビリティの推進しています。

サステナビリティ委員会

森六グループ全体でサステナビリティ経営を能動的に推進するために、森六株式会社の代表取締役社長を委員長、同社のサステナビリティ担当役員を副委員長とするサステナビリティ委員会を年3回開催しています。本委員会では当社グループの方針策定やサステナビリティ重要課題の特定、サステナビリティ戦略について議論するとともに、重要課題への取り組み状況のモニタリングを行っています。本委員会で決定された内容は、年2回、取締役会へ報告され、社外取締役の監督・アドバイスも踏まえて、グループ全体計画へ反映されます。​
なお、本委員会の事務局は森六株式会社のサステナビリティ推進部が担っています。

気候変動対応と役員報酬の連動

2022年度から、GHG排出量削減率の達成度を取締役報酬の一部に反映する仕組みを導入しています。
GHG排出量の50%削減(2030年度目標)に向け、45%削減(2027年度末目標)を指標に組み込み、中期経営計画ごとの取り組み状況を評価に反映しながら、取締役のコミットメントのもと、気候変動問題の解決に取り組んでいます。

戦略

シナリオの選定

森六グループでは、シナリオ分析にあたり、脱炭素政策が進められた場合として「1.5~2℃シナリオ」を、対照的に脱炭素政策が限定的に行われるシナリオとして「4℃シナリオ」を想定し、事業への影響を分析しました。​

シナリオ
参照シナリオ例
世界観イメージ​
(シナリオに基づく予想)
1.5~2℃
IEA:NZE・SDS​
IPCC:RCP2.6​
- 持続可能な社会に向けて政府が気候変動対策に積極的に行う​
- 炭素価格などCO2排出コストが増加する​
- 電力は太陽光発電などの再生可能エネルギーが増加する
4℃
IEA:STEPS​
IPCC:RCP6.0
- 政府が気候変動対策を強化しない​
- 炭素価格などの支出の影響は少ないと予想される一方、異常気象の激甚化によるコストが増加する​
- 電力は化石燃料に依存した発電方法が継続する

シナリオに基づく主要リスク・機会の分析と実施事項・対応策の検討

サステナビリティ委員会で気候変動に関する重要リスク・重要機会を洗い出し、それらに対する実施事項の記入と対応策の検討を行いました。検討の結果、当社グループの事業における気候変動に関する主要なリスク・機会を一覧化したものが下表となります。​
時間軸として、短期:2025年時点、中期:2030年時点、長期:2050年時点を想定して検討しています。

気候変動リスク・機会に関する分析(2025年6月時点)

【時間軸】 中期:4~10年(2030年) 長期:11~25年(2050年)

移行リスク(1.5~2℃シナリオに基づいて分析)ダイジェスト

以下の分析における時間軸は、すべて「中期から長期」で設定されています。

リスク項目
事業インパクト
財務インパクト
リスク 機会 リスク 機会
政策・規制
プラスチック規制
- プラスチック規制によるプラスチック製品需要減及び収益減
- バイオマスプラスチックへの切替に伴うコスト増
- プラスチック代替材料での新規部品開発による競争力向上
- プラスチックリサイクルによる製造過程の効率化
- バイオマスプラスチックなどの新規材料の拡販による売上増
再エネ政策
- 再生可能エネルギー導入による投資コスト増
- エネルギー市場の構造変化による、エネルギー価格の不安定化
- エネルギーコスト低減による、競争力向上
- 環境への配慮やエネルギー効率の向上による市場競争力向上
- 社会的責任や企業の持続可能性向上による、ステークホルダーとの信頼関係構築
技術
低炭素技術の進展
- 低炭素製品への移行による既存製品の需要低下
- 低炭素技術導入による追加コスト
- 生産事業・商事事業の協業により、環境配慮型材料開発を行うことでの環境配慮型製品・材料の需要増加
- EV化に伴うビジネス機会の拡大
- 低炭素設備の導入によるエネルギー効率向上とコストの削減
市場
製品とサービス
- 資源循環型材料開発の遅れによる機会損失
- 規制や環境変化によるプラスチック製品の使用制限
- 原材料の調達や物流への影響による供給難
- 新たな市場や顧客を開拓することでの事業拡大や事業多様化
- サプライチェーン全体での環境負荷削減への取り組みによる調達網構築
- 消費者ニーズの変化への対応による収益増加

物理リスク(4℃シナリオに基づいて分析)ダイジェスト

以下の分析における時間軸は、すべて「中期から長期」で設定されています。

リスク項目
事業インパクト
財務インパクト
リスク 機会 リスク 機会
急性
異常気象の激甚化(台風、豪雨、土砂等)
- 異常気象による製造停止やサプライチェーン断絶による生産低下・売上減少
- グローバル複数拠点での供給対応力を活かした調達リスク回避
慢性
平均気温の上昇
- 冷房使用増加によるコスト上昇
- 環境配慮型製品の需要拡大

リスク管理

重要リスクの確定プロセスとモニタリング

事業全体の現状把握と分析を行い、グループ全体に共通するリスク項目を精査し、グループとして取り組むべきリスクを取りまとめています。
これらのリスク項目については、全社的な経営視点から、森六グループへの影響度や重要度を総合的に評価し、優先度の高いリスクを特定しています。
気候変動問題に関するリスクとその決定プロセスについては、サステナビリティ委員会で審議され決定しています。
また、事業環境の変化や事業戦略の進捗に応じて、リスクと機会の見直しを随時実施し、取締役会への報告も行っています。

指標と目標

長期目標

森六グループは、「2030年度までにScope1およびScope2におけるGHG排出量を50%削減する」という目標を掲げています(基準年度:2019年度)。
再生可能エネルギーの導入などを通じてScope1およびScope2の排出量削減を進める一方で、サプライヤーと協働しながらScope3の排出量の把握と削減にも取り組み、脱炭素社会の実現にも貢献していきます。

GHG排出量実績と目標値(Scope1,2)

単位:[CO2e-t]


Scope
 
実績
目標値
2020年
3月期
(基準年排出量)
2023年
3月期
2024年
3月期
2025年
3月期
2028年度
3月期
2031年度
3月期
Scope1
22,654.94
20,901.93
18,946.36
17,754.00
Scope2
マーケット基準
88,943.18
60,066.82
51,036.39
 50,170.98
合計
111,598.12
80,968.75
69,982.75
67,924.98
61,378.97
55,799.06

[注釈]
- 算定範囲:森六グループ

GHG排出量実績(Scope3)

単位:[CO2e-t]

  
カテゴリ
2022年3月期
2023年3月期
2024年3月期
2025年3月期
カテゴリ1
購入した製品・サービス
424,023.97
389,758.31
407,521.48
417,382.46
カテゴリ2
資本財
4,713.38
1,856.06
5,690.63
6,083.06
カテゴリ3
Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動
2,322.67
2,003.75
2,387.84
2,220.35
カテゴリ4
輸送、配送(上流)
12,544.48
12,726.91
10,742.61
4,131.56
カテゴリ5
事業から出る廃棄物
855.37
935.12
907.08
39.71
カテゴリ6
出張
689.09
1,434.16
1,635.35
1,859.48
カテゴリ7
雇用者の通勤
337.76
334.20
438.83
435.67
合計
445,486.71
409,048.51
429,323.83
432,152.29
 

[注釈]
- カテゴリ8-15については算出対象外
- 算定範囲:森六株式会社

GHG排出量削減率

GHG排出量削減率

森六グループでは、TCFD提言に基づく開示とともに、温室効果ガス(GHG)排出量の削減に取り組んでいます。
Scope1およびScope2については、省エネルギーの推進や設備の見直しなどを通じて、拠点ごとの状況に応じた継続的な排出削減に取り組んでいます。
一方、Scope3については、排出実態の把握を目的に算定を進めており、その結果は当社ホームページにて開示しています。
今後は、排出量の管理精度を高めることで、より実効性の高い対応につなげていきます。

エネルギー消費量(Scope1,2の算定基礎)

単位:MWh

  • エネルギー消費量の表

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギー導入比率折れ線グラフ

グループ全体で再生可能エネルギーの導入を推進しており、2024年度時点で対象となる38拠点のうち17拠点で導入が完了しています。
生産事業本部の開発センターおよびインド拠点では、太陽光パネルを設置し自家発電を実施しています。ケミカル事業本部では、四国支店およびグループ会社の森六アグリでCO2フリー電力への切り替えを行っているほか、グループ会社の四国化工・西山第一工場でも、PPA契約により太陽光発電を導入しています。
引き続き、再生可能エネルギー導入比率の向上を通じ、環境負荷低減と持続可能な社会の実現に貢献していきます。

CDP評価で気候変動・水セキュリティともに着実なスコア向上を達成

CDPロゴ

当社グループは、気候変動および水資源に関する取り組みと情報開示の強化により、2024年度のCDP評価において、気候変動「Bスコア」、水セキュリティ「Bスコア」を取得しました。気候変動分野では2023年度に2段階のスコア向上(CからBへ)を達成し、2024年度も引き続き「Bスコア」を維持しています。
水セキュリティ分野では、前年の「Cスコア」から2段階アップとなる「Bスコア」を新たに取得しました。
こうした評価の向上は、TCFD提言に基づくガバナンスやリスク管理体制の整備に加え、Scope1・2排出量削減の推進や水使用量の把握・管理体制の強化、さらに環境データの可視化や目標設定といった取り組みが評価された結果であると捉えています。

S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数

S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスと東京証券取引所によるインデックスで、環境情報の開示状況や炭素効率性の水準により構成銘柄のウエイトが決定されます。森六も銘柄に組み込まれています。