ビジネスチャンスとSDGs②
Our Stories「リサイクルカーボンファイバー」という新しい価値
カーボンファイバー(炭素繊維)は、需要が急成長する一方で、価格が高くリサイクルが難しいという課題があります。森六はグループ一丸となって、カーボンファイバーのリサイクル材を活用した革新的な自動車向け樹脂部品の実用化に挑んでいます。この取り組みを通じて、ビジネスチャンスの拡大とともに社会課題解決への貢献を目指します。
軽くて強いカーボンファイバーを自動車部品に
鉄に比べて1/4の重さでありながら10倍の強さをもち、航空機や自動車などの産業用途で需要が急拡大しているカーボンファイバー。さらに今後は、航空宇宙分野などでの活用も期待されています。しかし、その一方でカーボンファイバーのリサイクルプロセスはいまだ確立していません。例えば、飛行機はそのボディに多くのカーボンファイバーが使われていますが、現役を引退すると「飛行機の墓場」と呼ばれる砂漠地帯の空港などに放置されているのが実情です。
こうした状況を受けて、森六はグループの力を結集し、カーボンファイバーをリサイクルした新たな素材の開発および自動車向け樹脂部品の実用化に取り組んでいます。その一環として2018年、森六ホールディングスはカーボンファイバーリサイクル工業株式会社(以下CFRI)に共同出資しました。岐阜県御嵩町に位置するCFRI は、伝統的な「美濃瓦」の焼成技術を応用し、航空機の製造工程から出る廃材などからカーボンファイバーのみを取り出すことに成功しました。加えて、この画期的な新技術は世界でもトップレベルの効率性を有しています。
森六は、カーボンファイバーのリサイクル材を用いてプラスチック材料を開発、製造することで「森六にしか提供できない」高付加価値、すなわち軽量でありながら環境にやさしく、繰り返しリサイクルできる自動車部品の実現を目指します。また、これまで困難だったカーボンファイバー廃材のリサイクルを進めることは、SDGs※の17の目標のうち「12.つくる責任 つかう責任」にもつながります。森六は本業を通じて、社会的課題の解決に貢献していきます。
SDGs(Sustainable Development Goals):2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」。貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会などについて、2030年までに達成すべき17の目標が掲げられた。
リサイクルカーボンファイバーを活用した部品の開発森六ケミカルズが開発した機能性プラスチック材料を用いて、森六テクノロジーでは自動車や二輪車に用いる軽量化部品の開発を行っています。
ビジネスモデルを確立するためにグループ総合力で挑む
今後は、実用化およびビジネスモデルの確立に向けて、森六グループの総合力を活用します。具体的には、多くの取引先を持つ森六ケミカルズが連携企業を仲介するほか、森六テクノロジーが部品開発のほかホンダをはじめとする自動車メーカーへの提案を担います。
ただし、カーボンファイバーのリサイクル材が樹脂部品として自動車メーカーに採用されるまでには、いくつもの課題が残っています。まず調達についていえば、自動車部品は「まとまったボリュームを安定的に供給できる」ことが必須要件となるため、大量のリサイクルカーボンファイバー原料「CFRP(カーボン強化プラスチック)」を用意する必要があります。最適なのは 航空機製造時に廃棄されるCFRPおよび、退役後の航空機の機体の廃材ですが、安定的な調達先はそう簡単には見つかりません。というのも、航空機の寿命は長く、一般的に製造から20~30年で退役となりますが、その間にLCCに譲渡されるケースが多くあります。現行の法規制では廃棄の最終責任を負うのが最後の利用者(この場合はLCC)であるため、まとまったリサイクル材を保有しているとは限らないのです。そのため数多くの航空会社やLCCにアプローチして、必要な量を確保できるまで折衝を続ける必要があります。
一方、部品開発に関しては、節目節目で多様な物性の試験や品質保証が必要となるため、数年がかりの開発になるものと見込んでいます。提案段階においても、納入先となる各自動車メーカーは新しい素材・部品の採用に慎重なため、従来品や改良品と同じようにはいかないものと想定されます。これらの課題に対し、森六ケミカルズと森六テクノロジーの関係スタッフは、ときにぶつかりながらも率直に意見を交わし、知見を結集しながら一つひとつ乗り越えていこうとしています。
飛行機とカーボンファイバー飛行機では、1980年代後半から炭素繊維素材が尾翼の一部に使用されるなど用途が拡大してきており、安定的なリサイクルの枠組みが、必ず必要になります。
これまでにない樹脂部品でより良い次世代を拓く
自動車業界では、コネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、共有(Shared)、電動化(Electric)の頭文字をとった「CASE」が次世代の潮流とされています。なかでも、「電動化」が進んでいくと、電池の採用拡大にともなって従来以上に車体の軽量化が求められ、軽量な樹脂部品の提案が重視されると考えられます。
だからこそ、関係スタッフは一丸となって数々の難関にアタックし続けます。それだけの価値がある革新的な素材・部品だと確信しているからです。「自分たちの生み出した全く新しい部品で、自動車業界を、カーボンファイバーの世界を、社会をより良くしたい」――その熱い信念を胸に、今日も挑んでいます。
樹脂化による軽量化が進む次世代自動車自動車では燃費向上に向けてさらなる軽量化へのニーズが高まっています。森六テクノロジーでは、内外装の「オール樹脂化」への挑戦を続けています。